「FABRIC TOKYO」が、スーツを着る95%のオトコをカッコ良くする|流行より、洋服が知りたい!

「FABRIC TOKYO」は、インターネットを活用したスーツのカスタムオーダーサービスを展開する新進気鋭のスタートアップ企業。前回の記事では、実際に新しいスーツを作る様子をお届けしたけれど、今回はもうちょっと裏側に踏み込むことに。大手繊維商社からやってきた“熱い”開発担当者が語る「FABRIC TOKYO」の魅力、そして作り手全員の顔が見えるモノ作りプロジェクト「FALKLAND TO TOKYO」とは?

「オーダースーツを扱う『FABRIC TOKYO』に中途入社しましたが、僕はもともとスーツが好きではありませんでした(笑)。新卒の就職活動のときは、スーツを着ないことを軸にしていたほどです。それでも選んだのは、ビジネスモデルや考え方に共感したからです」

そう話すのは「FABRIC TOKYO」クリエイティブ室・室長の峯村昇吾さん。大手繊維商社に長年勤めながらも、日常的に大量の洋服が廃棄処分になっていく負の問題やアパレル業界の仕組みに疑問を抱くようになった。そんな時、たまたま出会った「FABRIC TOKYO」のD2C(Direct To Customer)のシステムや、サイズだけでなく個人の価値観やライフスタイルにフィットする製品を届ける「Fit Your Life」という考え方に惹かれて入社することになったという。

―先日はオーダースーツを体験させていただき、ありがとうございました! 早速ですが、そのとき選んだスーツの生地を取り扱うプロジェクト「FALKLAND TO TOKYO」について教えてください。

「スーツ作りは、コットンやウールなどの原材料からすべてが始まります。その後、紡績や糸染め、織り、縫製、最後に搬送することで、ようやくお客様の手元に届く。そうした一連の流れをすべて追って、生産地だけでなく、作っている人の顔まで見えることにこだわったのが『FALKLAND TO TOKYO』というプロジェクトです」

―ここ数年で、野菜や卵のパッケージを見ると生産者の情報を目にするようになりましたが、アパレル業界でそこまで追求している話はなかなか耳にしませんね。

「さらに詳しく説明すると、スタートは羊毛牧場の主人まで遡ります。アルゼンチン・フォークランド諸島にある『ブルービーチファーム』という牧場で育てられた羊のウールは、海を渡ってインド・ジャヤにある『ジャヤシ―社』で紡績されて糸になります。

再び海を渡って今度は日本へ。愛知県尾州地区にある1927年創業の『恒川織物』で織られて生地になり、同じく尾州地区の『ソトー』で染色されます。そして青森県にある『オリジナルテクノロジー青森工場』で縫製されて、ようやくスーツの完成。最後に千葉県にある『大和物流』で検品、発送していただき、お客様のところに到着するというわけです」

―普段何気なく洋服を着ていますが、ここまで多くの人が関わっていて、どのように作られているか知っている人は少ないと思います。

「ファストファッションが盛り上がったことにより、手頃な値段で洋服を楽しめる人が増えました。その功績は非常に大きなものです。その一方で、メーカー側がモノ作りのすべての工程をオープンにできるかと言われたら、難しい部分もあるでしょう。そこに関して、僕たちはモノ作りに対する責任を果たしていきたいし、追求していきたいと考えているんです」

―そもそも、「FALKLAND TO TOKYO」を立ち上げた理由はなんだったのでしょうか。

「洋服って、どこのブランドのモノかが分かっても、誰が作ったかまで追えるものってないなって思ったんです。アパレル業界は、作る側の廃棄が問題になっていますし、着る側もファストブランドで10着買ったら9着は捨てるなど、短いサイクルで消費することが当たり前になってしまっています。どうすれば洋服に愛着を持ってもらえるか考えたときに、やっぱり本質を追求することが大事なんだとたどり着きました」

―この場合の本質とは何を指すのでしょうか。

「ちょっと抽象的な話になってしまうかも知れないですが、モノって捨てられるものと捨てられないものがあるじゃないですか。僕の場合は、思い出があるものって捨てられなくて。例えば、実家から持ってきたバスタオルは生地が固くなってるし、ひらがなで名前が書いてあるけど、なぜか捨てられないんです。あとは、お土産も捨てられないですね(笑)。

それって、思い出があるから愛着が湧いて、捨てられなくなるからですよね。モノに思い出があると、モノの捉え方が変わるなって感じています。それって物事の本質的な部分ではないでしょうか」

―たしかに若い頃にお金を貯めて買ったCDは、いまだに捨てられないです。

「『衣食住』を考えたときに、『食』にはいただきます・ごちそうさまという言葉があって、『住』にはいってきます・ただいまという言葉があるのに、『衣』にはなんにもないぞ! と気がついて。なぜかと考えたときに、やっぱり作り手が分かる、想像できるっていうのは大きな違いなんじゃないかと思いました。新築の家を建てたことがない人でも、大工さんの姿ってなんとなく想像できますが、洋服は作り手のことを知らない人が圧倒的に多い。

もしも、おばあちゃんが手編みのマフラーをプレゼントしてくれて、それを首に巻くときって『ありがとう』に近い感情が湧くと思うんですよ。そういう体験が、もっと洋服にあっていいと感じるんです。こんな工程があって、こういう人が、こういう風に作ってますよ。モノ作りの情報をしっかり届けることが、いまのアパレル業界の問題を解決する一歩になるんじゃないかなと考えたのが、『FALKLAND TO TOKYO』を立ち上げた理由です」

―すでにファッションに対する感度の高い人は、洋服の中にあるストーリーを重視していると感じますが、どのように考えていますか。

「いまの時代って、ジャラジャラ着飾るのってカッコ良くないじゃないですか。モノは溢れているし、モノを持つこと自体の価値は下がっています。それでもなんでこのモノを持つのかということに、自分の生き方が問われている、反映されている時代になっているんじゃないでしょうか。自分らしさや生き方そのものが現れると思うんですよね。

ひと昔前は、自分らしさや自分のスタイルを表すために、裏原系、ストリート、モードなどの○○系というジャンルを選択して、洋服を纏うという感覚があったし、もちろん今でもあるでしょう。だけど、SNSを通して自分とはなにかという情報を発信できるようになったことで、洋服を通して自分を表現する必要が薄れてきている。いまの時代は外見じゃなく、中身の重要性が増している。自分がどう生きるのか、外見だけじゃなくて、思想のカッコ良さ、生き方のカッコ良さが求められている時代なんだと思います」

―「FABRIC TOKYO」ではフェアトレードのコットンを使用したYシャツも展開していますが、「FALKLAND TO TOKYO」と通ずるところを感じます。

「そのどちらも会社としてのCSR活動ではなく、ど真ん中の事業としてやっています。なんでやっているかというと、“シンプルにカッコ良い”と思っているからです。昔は、誰もが有名なデザイナーズブランドの思想に憧れていた時代があり、ファストファッションが登場して無機質でもいいからそれなりにお洒落なものが低価格で手に入る時代へと変化した。

しかし、現代ではファストファッションに無価値観を感じて、再び思想に戻っていると感じるんです。言ってしまえば、洋服は表面的には無機質なモノかもしれません。だからこそ、その中にある想いを伝えたいというのが「FALKLAND TO TOKYO」で表したいことです」

―まだまだオーダースーツを体験したことのない人は多いと思いますが、そうした人にメッセージをお願いします。

「これまで既製のスーツしか買ってこなかった人にカスタムオーダーを体験してもらうハードルの高さは実感しています。普段ビニール傘しか使わない人にちょっと高級な傘を選んでもらう、ボールペンしか使ってこなかった人に万年筆を選んでもらう。そうした難しさがあると思います。

加えて、これからの時代はビジネスマン=スーツではなくなり、仕事でスーツを着る人はどんどん減っていくでしょう。でもスーツを着ると、ちょっと気持ちがシュッとしませんか? だからこそ、これからもスーツは気分の切り替えのために存在すると考えています。別にスーツで出勤する必要はないけど、なんとなく週一くらいはスーツを着てみようかなといった具合に。

社内の人間も、全員がスーツ好きってわけじゃないんです。でも別にそれでいいと思っていて。5%のスーツ好きのためではなく、95%のスーツにネガティブなイメージを持っている人を変える。そうすれば、スーツをカッコ良く着る人が増えるんじゃないかなって。もしクローゼットに2着くらいしかスーツが入っていない時代が来るとして、そのスーツに『FABRIC TOKYO』を選んでいただければ非常に嬉しいです」

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